代表ブログ

知識創造NPOへ

(こちらのコラムは2016年2月分の御報告に寄付者の皆様にお送りした
メールマガジンを一部加筆編集したものです。)

OVAでは現在OVAコンサルタント育成カリキュラムを
作成するプロジェクトを立ち上げています。

OVAはリーチの仕方に脚光を浴びる事が多いですが、
支援の手法そのものが独自性があり、
他の団体と比較して大きく異なっています。

今まで自殺ハイリスク者へかかわってきた現場といえば
多くが電話ホットラインサービスです。
それは「1度きり」の相談であり
その援助方法も「傾聴/共感的に話をきく」に終始することが多かったです。

OVAは「継続支援」ですし、「アセスメント(見立て)」を行います。
すなわち心身の健康状態はどうなのか、
自殺企図がどの程度差し迫っているのか、見立てていく事をします。

支援方法もメール、電話、対面と状況に応じて使い分け
現実の資源につないだり、当事者と関係者を調整したりなど、
ソーシャルワークを行っています。

OVAの相談員(コンサルタント)は
アセスメントをする時点で専門性が要求されるので、
臨床心理士、精神保健福祉士等の対人援助職しか採用していません。

ただ、自殺念慮者の援助経験を積んできた対人援助職は
我が国にほとんどいないので、一から教育をする必要があります。

さらに「メール」という通常の援助場面で使わない手法を使わなければなりません。
つまり、20年臨床を続けた人に対しても
0ベースで知識・技術を身につけるための教育が必要があり、
その方法を様々模索してきました。

座学も行いますが、基本的には私がマンツーマンで
事例検討やOJTを通じて教えることになるわけですが
これらは伊藤が培ってきた膨大な暗黙知を
コンサルタントに伝えていくというプロセスです。

今、プロジェクトとしてやろうとしているのは
まず、これらの暗黙知を形式知化
させようとしていることです。
つまり、言語化し、OVAのコンサルタントに
必要な知識、技術を体系化しようというものです。

SECIモデル(野中郁次郎)でいうと
暗黙知→形式知(表出化)というフェーズです。

私達は個人の知識を組織的に共有し、
より高次の知識を生み出していきたいと考えています。
アートとサイエンスを融合し、
エビデンスのある危機介入方法を確立したいという
挑戦的な知的ビジョンを持っています。

わが国には自殺予防の危機介入ができる(対人援助の)専門家
(suicide prevention professional)が存在しないというのが
私の考えですが、それを団体内のみならず
育成するということも長期的なビジョンでもあります。

また私達が生み出しているものは
自殺念慮を持った人への援助の新しい方法、だけではありません。

例えば社会的ハイリスク者をマーケティングの手法で
アウトリーチするという発想(それを夜回り2.0と呼称)は
今まではなかった価値観や方法論であり、
これらの技術(これにはコピーライティングの知識・技術も必要です)
に名称をつけて、体系化・養成することもできると思います。
これはおそらく日本では誰もやっていません。

ソーシャルワーク(社会福祉)の世界にも
「インターネット・ソーシャルワーク」などと称して
新しい風を吹き込む事ができるかもしれません。

NPOは善意あるボランティア集団ではなく、
プロフェッショナル集団となっている時代です。

私達は自殺の危機にある人を支援する、ということに
軸足を置きながらも、様々な知的ビジョンを掲げ、
新たな知識・価値を創造し続けたいと思っています。

NPO法人OVA代表 
伊藤次郎


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