
NPO法人OVAでは、2026年7月7日〜21日の2週間、孤独・孤立対策サイトを使ってChatGPT広告のテスト運用を行いました。
2026年7月から日本でもChatGPT広告の運用が可能となり、話題となっています。このChatGPT広告が、どこまで実際の支援やデジタルアウトリーチ(デジタル技術を活用し、潜在的な悩みを抱える人に、支援を積極的にアプローチして届ける取り組み)に使えるのか、デジタルアウトリーチ担当者としてはとても気になっていました。
まだ登場して間もない媒体のため、配信設定や最適化に関する運用ノウハウも、まだ十分に蓄積されていません。本記事では、ChatGPT広告とGoogle検索広告の比較テスト結果に加え、実際の運用を通じて得られた知見や、デジタルアウトリーチへの活用可能性について紹介します。
結論から言うと
広告実績の比較
ChatGPT広告は表示回数がGoogle検索広告の約5倍と広範にリーチできましたが、クリック数、CTR、CV数、CVR、CPAなどのパフォーマンス指標はGoogle検索広告が大きく上回りました。コンテキストヒントの設定など運用ノウハウの課題も残りました。
リーチ層の比較(セルフチェックの回答から)
ChatGPT広告経由の回答数が少なく、Google検索広告との統計的な比較は難しいものの、どういった属性の人に届いているかの傾向を把握するために集計データを整理しました。どちらの媒体も、セルフチェックまで答えてくれた層に限って言えば、深刻な数値を示す人が多く、リスクの高い層ヘリーチできる可能性が感じられました。
運用上の知見
- 入札設定: 今回の予算では上限クリック単価100円程度で運用可能でした。また、直近のアップデートで選択可能となったコンバージョンによる入札の最適化は、行動喚起を目的としたアウトリーチに有効と考えられます。
- 広告審査: 孤独孤立領域で運用した今回は、自殺・自傷行為やメンタルヘルスに関するOpenAIのポリシーに抵触はありませんでした。
- 管理: ChatGPTアプリ「ChatGPT Ads Manager」による設定・レポーティングは非常に便利でした。
自殺対策への有用性
現時点では検索広告と比較して精度面の課題はあるものの、独自の媒体特性を活かすことで、これまでの手法では困難だった層へのアウトリーチに大きな期待が寄せられています。継続的なプロダクトのアップデートによって、現在のボトルネックも今後解消されていく可能性が高いと考えられます。
検証した条件
- 目的: 孤独・孤立対策サイトにおけるChatGPT広告の設定、運用、およびGoogle検索広告との比較分析を行うことで有効性と課題を洗い出す。
- 実施期間: 2026年7月7日 〜 2026年7月21日 (およそ2週間)。
- 対象サイト: 孤独・孤立対策サイト
このサイトでは以下の機能を持っています。- 相談窓口の紹介
- セルフチェック
- セルフケアの紹介
- 予算計画: (合計 およそ84,000円)
- Google検索広告およそ42,000円。
- ChatGPT広告およそ42,000円。
今回の検証ではセルフチェックの回答をコンバージョンとして、効果検証を行います。またそのセルフチェックの回答結果から、その媒体でリーチした層のリスクを調べます。セルフチェックには日本語短縮版 UCLA 孤独感尺度1、K62を用いています。
数値で見るパフォーマンス比較
現状では、コンバージョンの効率の面ではGoogle検索広告が優位でした。ChatGPT広告は表示回数が多かったですが、クリックや相談・セルフチェックへの誘導という面では課題が残る結果となりました。
広告の実績比較
ChatGPT広告とGoogle検索広告の主要指標の比較結果です。
| 項目 | Google検索広告 | ChatGPT広告 |
|---|---|---|
| 費用/円 | 43,012 | 44,132 |
| 表示回数 | 4,207 | 21,346 |
| クリック数 | 508 | 392 |
| クリック率 | 12.08% | 1.84% |
| クリック単価/円 | 84.7 | 112.6 |
| コンバージョン数 | 161 | 42 |
| コンバージョン率 | 31.69% | 10.71% |
| コンバージョン獲得単価/円 | 267 | 1,051 |
※コンバージョンはセルフチェックの回答としています。
※コンバージョン数は広告管理画面から取得できる数値です。サイト行動実績(Google Analytics)と乖離する場合があります。これは、各プラットフォームで採用されている計測手法や定義の相違に起因するものです。
今回の比較では、ChatGPT広告はGoogle検索広告と比較して表示回数が約5倍多く、広範なユーザーに表示されていることが確認されました。一方で、その他の指標である、クリック数、クリック率(CTR) やコンバージョン数 (CV)、コンバージョン率(CVR)、獲得単価(CPA)はGoogle検索広告が大きく上回っていました。行動促進を目的とした広告運用においては、現段階ではGoogle検索広告の活用がより効果的であると言えそうです。
サイト上での行動データを見てみる
サイトのアクセス解析 (Google Analytics) によるユーザー行動データは以下の通りです。
- サイト訪問ユーザー数 【ユーザー数】
- Google広告 469 user
- ChatGPT広告 344 user
- セルフチェック回答数 【ユーザー数(割合)】
- Google広告 160 user (34.1%)
- ChatGPT広告 15 user (4.4%)
- 相談リンククリック数 【ユーザー数(割合)】
- Google広告 95 user (20.2%)
- ChatGPT広告 13 user (3.8%)
サイト上の数値からも、現時点ではGoogle検索広告のほうが、セルフチェックの回答や相談行動の喚起がより多く、両媒体でリーチしている層の違いを感じました。
※広告管理画面から取得できるコンバージョン数とサイト行動実績 (Google Analytics)との間で乖離が生じる場合があります。これは、各プラットフォームで採用されている計測手法や定義の相違に起因するものです。
セルフチェックの回答からリーチしたユーザー層を整理
サンプル数が少ないため (ChatGPT経由は12件)、統計的な比較はできませんが、どういった属性の人に届いているかの傾向を把握するために集計データを整理しました。
以下がセルフチェックの回答です。
| 区分 | 項目 | ChatGPT広告(n=12) | Google検索広告(n=112) |
|---|---|---|---|
| 年齢 | 10歳以下 | 1(8.3%) | 5(4.5%) |
| 11〜15歳 | 0(0.0%) | 32(28.6%) | |
| 16〜19歳 | 1(8.3%) | 23(20.5%) | |
| 20代 | 2(16.7%) | 21(18.8%) | |
| 30代 | 0(0.0%) | 6(5.4%) | |
| 40代 | 2(16.7%) | 11 (9.8%) | |
| 50代 | 3(25.0%) | 6(5.4%) | |
| 60代 | 2(16.7%) | 4(3.6%) | |
| 70代 | 1(8.3%) | 4(3.6%) | |
| 性別 | 女性 | 8(66.7%) | 87(77.7%) |
| 男性 | 4(33.3%) | 25(22.3%) | |
| その他 | 0(0.0%) | 0(0.0%) | |
| UCLA孤独感尺度 | 3点 | 0(0.0%) | 2(1.8%) |
| 4〜6点 | 1 (8.3%) | 5(4.5%) | |
| 7〜9点 | 4(33.3%) | 36(32.1%) | |
| 10〜12点 | 7(58.3%) | 69(61.6%) | |
| K6 | 0〜4点(問題なし) | 0(0.0%) | 5(4.5%) |
| 5〜9点(心理的ストレス相当) | 4(33.3%) | 16(14.3%) | |
| 10〜12点(気分・不安障害相当) | 1(8.3%) | 13(11.6%) | |
| 13点以上(重症精神障害相当) | 7(58.3%) | 78(69.6%) |
※不同意・重複回答を除外した分析対象件数で集計。
Google検索広告は中高生〜20代の若年層からの回答が過半数を占めたのに対し、ChatGPT広告は40代以上の比較的高い年齢層の回答が目立ちました。
また、どちらの媒体も、セルフチェックまで答えてくれた層に限って言えば、K6や孤独感尺度で深刻な数値を示す人が多く、リスクの高い層ヘリーチできる可能性が感じられました。孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年)では、UCLA孤独感尺度で「10〜12点」の割合は一般人口で6.5%3にとどまりますが、ChatGPT広告は58.3%・Google検索広告は61.6%でした。同様に、2022年国民生活基礎調査でK6が10点以上の割合は一般人口で9.2%4であるのに対し、ChatGPT広告は66.6%・Google検索広告は81.2%でした。孤独感や心理的苦痛を抱える層に、両媒体ともリーチできていたと考えられます。
運用で気づいた仕様とポイント
テスト運用を通じて得られたChatGPT広告の知見について書きたいと思います。
入札単価の設定
ChatGPT広告においても、既存の媒体と同様に広告の関連性が考慮されたオークション形式5が採用されています。そのため、入札単価の設定は重要な要素です。
今回のテストでは「クリック」をキャンペーンの目的に設定し、クリック数が最適化される運用を採用しました。配信開始当初、上限クリック単価(上限CPC)を400円程度に設定したところ、平均クリック単価も上限付近となる傾向が確認されました。その後、上限を100円程度まで段階的に引き下げましたが、配信ボリュームが低下することなく安定した運用を継続できました。日予算3,000円程度であれば、平均クリック単価100円程度で運用できると思われます。
なお、直近のアップデートにより、「コンバージョン最適化」による入札戦略も選択可能となっています。これは、コンバージョンの確度の高いユーザーへ優先的に配信を最適化する機能です。今後、相談窓口への誘導といった具体的なアクションを重視するデジタルアウトリーチにおいては、コンバージョン目的の設定を活用することが、より効果的なアプローチになると期待されます。
ターゲティングの選択肢
現在設定できる地域指定は「都道府県単位」までで、市区町村などの細かい絞り込みはできません。また年齢や性別でのターゲティング項目も用意されていないため、配信文脈を指定する「コンテキストヒント(どういう会話の文脈で出すか)」の作り込みが運用の肝になります。(今後のアップデート次第で、変化する可能性があります。)
ポリシー面
OpenAIのポリシーでは自傷行為やメンタルヘルス関連の制限が厳しいですが、今回の「孤独・孤立対策」という文脈での出稿については不承認判定を受けることなく配信できました。こちらのポリシーがあるので自殺対策では利用が難しい可能性がありますが、アウトリーチを実施する領域によってはChatGPT広告をデジタルアウトリーチに利用できるのではないでしょうか。
管理アプリ「ChatGPT Ads Manager」の使い勝手
ChatGPT上で動く管理アプリを使って、対話形式で配信設定やレポート作成ができる仕組みはかなり快適でした。従来の広告管理画面のように複雑なメニューを探し回る必要がなく、チャットで指示を出して状況を把握できるのは個人的によいポイントだと感じました。
まとめ
今回のテスト結果を見る限り、直接的な相談行動やセルフチェック回答を効率よく獲得したい場面では、依然として検索広告が優勢です。
ただ、プロンプトという「検索窓よりも具体的な悩み」が入力されるChatGPTの特性上、コンテキストヒントの出し方を工夫すれば、検索語句では拾いきれない層ヘリーチできるポテンシャルも感じます。
本ブログの執筆期間中にも、ChatGPT広告には「コンバージョン最適化キャンペーン」の導入といった重要なアップデートが続いています。プラットフォーム側の進化スピードを鑑みると、運用上の課題も今後解消・改善されていくものと期待されます。
私たちOVAは、今後もプラットフォーム側の進化やデジタルマーケティングの最新手法を注視しつつ、AI時代におけるデジタルアウトリーチの有効な活用ポイントを継続的に模索していきます。
参考文献
- Arimoto A & Tadaka E:Reliability and validity of Japanese versions of the UCLA loneliness scale version 3 for use among mothers with infants and toddlers. BMC Women’s Health. 2019:19:105
- 古川壽亮・大野裕・宇田英典・中根允文(2002) 一般人口中の精神疾患の簡便なスクリーニングに関する研究 平成14年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業) 心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究 研究協力報告書.
- 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和7年実施)- 内閣府孤独・孤立対策推進室
- 2022(令和4)年 国民生活基礎調査 – 厚生労働省
- ChatGPT における広告の基本 | OpenAI Help Center
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