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事務局スタッフブログ

「不人気」な社会課題に寄付は集まるのか? ー英国のフィランソロピーの研究ー


OVAの事務局ブログをご覧いただいてありがとうございます。
事務局の土田です。

事務局では、普段より業務に関係する調べものを行っています。
今回は、寄付の集まりやすい社会課題と、集まりにくい社会課題の比較に関する2015年の研究を見つけたので紹介いたします。
(今回の記事は約4,000字と、結構長めです。)

事務局の主な仕事は、OVAの各種事業を進めることと、その資金源を確保することです。
NPOの財源は、経営のモデルの形によって大きく変わってきます。※参考過去記事:NPOの経営モデル10分類
OVAのように、行政委託が財源の中心になる団体でも、新しいことを始めるためには財源の多様化が必要になります。※参考過去記事:NPOの財源多様性について

多くの場合、ご寄付も財源として挙げられますが、取り組む社会課題によって集まる寄付の規模が大きく異なることがわかっているのでご紹介します。
(そうです、このようなテーマをわざわざ取り上げるということは、OVAの社会課題は「不人気」に分類されるということです。)

※今回取り上げる研究:Rising to the challenge: a study of philanthropic support for unpopular causes
http://create.canterbury.ac.uk/15053/

(資料pdf)https://www.kent.ac.uk/sspssr/philanthropy/documents/Rising_to_the_Challenge.pdf

寄付先進国英国のチャリティトレンド

英国では2017年に推計1.5兆円の寄付が行われました。(※1)
これは日本の2016年の推計7,700億円(※2)の約2倍となっており、GDP比でも日本の0.14%に対して0.54%と、規模が大きいことがわかります。

非営利セクターがチャリティやフィランソロピーを促進する中で、大きく2つの側面が注目されてきました。
それは
1.社会貢献に寄付されるお金の総額をどう増やすか
2.寄付されたお金の有効性をいかに向上させるか
の2つです。

これに対して、今回の研究を実施したケント大学のフィランソロピー研究センターの2人は
「寄付の行き先と分布」について調査を行いました。
きわめて自発性の高い「寄付」という行為に対して、どのような社会課題が「寄付する価値がある」とみなされているのかという観点から調査が行われました。

※1 https://www.cafonline.org/about-us/publications/2018-publications/uk-giving-report-2018
※2 http://jfra.jp/research

寄付が集まる「人気」の社会課題

まずは、2009年度に個人による寄付が多かった国内の団体トップ100をリスト化し、取り組んでいるテーマごとに分類することで、寄付が集まりやすい社会課題を明らかにしました。
その結果、「人気」な分野はがん、国際協力、医療(がん以外)、動物保護、宗教、子どもなどが挙げられました。

また、2011年度に行われた英国内の寄付の総額を社会課題ごとに分類しても、医療、宗教、病院、国際協力、子ども、動物保護という結果が得られているなど、近しい傾向が得られています。
※下図参照

英国の寄付

いずれも寄付が集まる要因として、寄付の重要性が認識される、個人的にその社会課題と関係を感じる、信頼している人から丁寧にお願いされる、個人的なメリットになる、社会課題の解決につながる自信があるなどが挙げられることがわかっています。

課題ごとの差はどれだけ大きいのか?

英国で寄付を受け取る金額トップ100の団体を、分野別にさらに細かく見ていきましょう。
トップ100の内、22団体を医療に関する団体が占めており、約2,000億円を集めています。
その内、身体疾患が99%を占めており、がんに関するチャリティはその過半数を占めています。
米国の疾病予防管理センター(CDC)の調査によれば、実際に死亡者数の多い疾患に寄付が集まるわけではなく(※1)、医療の分野をとっても疾患別の「人気」に大きな差があります。
(例えば糖尿病は死因の大きな割合を占めていますが、寄付額はその割合に相関せず、低いなど。)

またトップ100団体の内、国内の福祉に取り組む団体への寄付の総額よりも、国際協力への寄付が多いなど、同じ福祉が関わる分野でも海外の人気が高いことも分かっています。

さらに、動物保護分野への寄付が多いのも英国の特徴です。
トップ100団体の内、動物分野のトップ5の団体は、英国の社会問題として広く認識されているメンタルヘルスと依存症分野のトップ5の団体の、約10倍の寄付を得ています。

このように、寄付収入が多い一部の団体のデータに限りますが、分野ごとに大きな差が見られています。

※1 https://nonprofitquarterly.org/2014/09/05/infographic-compares-donations-to-disease-and-finds-big-disparities/

どれが「不人気」な社会課題なのか?

ここまで、寄付が集まりやすい社会課題と集まりにくい課題の差について取り上げてきました。
それでは、実際に「不人気」な社会課題は客観的に証明できるのでしょうか?

この研究では、ネット検索のデータを利用して、社会的に「不人気」な課題の分析をしました。(※1で具体的な手法を説明)
その結果をランキング化すると、メンタルヘルス(自殺と摂食障害含む)、難民、犯罪加害者、子どものメンタルヘルス、ロマ人(欧州で移動生活を行う少数民族)、HIV/AIDS、DVと虐待、セックスワーク、同性愛差別、ドラッグとアルコールへの依存がトップ10として挙げられました。
※下図参照

参考1 手法の説明
具体的には、Googleで「社会課題+不人気」「意味のない+チャリティ」などの組み合わせで表示された100の検索結果を抽出。
それらのページから、内容に新聞記事の出典があるものだけリスト化し、過去20年間の全ての新聞記事のデータベースで照らし合わせる。
それによって、検索の結果よく閲覧されており、かつ新聞で取り上げられている課題を、社会がみなす「不人気な社会課題」として分析。

寄付が集まる原因と集まらない原因

英国で寄付の集まりやすい分野は、医療、国際協力、宗教、動物保護でした。(それぞれかなり範囲が広いですが・・)
半面人気がないのは、メンタルヘルス、難民、犯罪加害、子どものメンタルヘルスなどでした。
人気の分野は、なぜ寄付を集めることに成功しているのでしょうか?

今回の研究で明らかになったのは、寄付を集めている団体は、寄付傾向が強い人の心をつかんでいる(つかみやすい)ということです。

英国では、個人による寄付の中心を、特定の属性の人が担っています。
それは、40~60代で高等教育を受けている、専門性が高い職業で管理職のポジション、宗教に敬虔、経済的に発展した地域に住んでいるという属性です。
英国民の9%を占めるこの人たちが、非営利団体の活動と社会課題に共感し、寄付したいと思えるのが寄付の集まりやすい社会課題だと結論付けられています。

このような現状に対して、研究の最後では寄付を集めるためにするべきことが提示されています。
その内容は、複雑な社会課題でも共感を生みやすいように「再構成」して見せ方を変えることです。
そのために、動画を活用したビジュアルでの訴求や、当事者のポジティブな雰囲気を出す、前向きなメッセージや当事者の個人的なエピソードを紹介するなどが挙げられています。

OVAはどのような方針をとるのか

この研究自体、「海外の寄付の集まりにくい非営利団体はどのように集めているのか」を手あたり次第調べる中で、8月頃に見つけたものです。
研究から分かったことは、「メンタルヘルスは海外でも寄付を集めにくい」ということでしたが、今後の情報発信に向けて得られた示唆も多くありました。
それは、「寄付傾向の強い人の共感を生むために、ビジュアルや個人のエピソードを使うことが有効そう」ということと、OVAとしてはそのような方針を取る気はないという2点です。

OVAは、2013年から若者対象の相談を行い、支援を届けてきました。
しかし同時に、活動の現場の知見を政治分野に発信したり、得られた知見をもとに対人援助職者への専門研修を提供するなど、社会構造や社会環境へのアプローチも並行して行ってきました。
最近では、より広く社会福祉の課題を解決すべく「声なき声」の実態調査や、「福祉アクセス」を向上させるための協働事業を進めています。

常に新しい取り組みを行っているので、財源をどう確保するかは課題であり続けています。
財源が安定してきた相談事業とは違い、新しい活動のためにはご寄付が必要です。
そのために、支援対象者個人に焦点を当てて共感を生むことよりも、より長期的に社会構造をどのように変えていくかという側面で共感を生みたいと考えています。

そのような方針を考えていますが、現状それに沿う情報発信は足りていませんので、改善してまいります。

これからもOVAの活動を応援して頂ければ嬉しく思います。

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