事務局スタッフブログ

Google検索広告の無償広告枠Ad Grantsを用いて、
6万8千回の相談サイトへのリンク表示と5210回相談サイトへの誘導を達成
-妊娠葛藤相談窓口 ピッコラーレ様との共同-

OVAの事務局ブログをご覧いただきありがとうございます。

今回のブログ記事は、検索連動広告を活用したハイリスクアプローチについて、妊娠葛藤相談窓口を開いている特定非営利活動法人ピッコラーレ様(以下 ピッコラーレ様)のGoogle Ad Grantsを用いたアウトリーチ活動のご支援をしましたので、その成果についてお話ししたいと思います。

検索連動広告を用いたアウトリーチ

OVAでは自殺に関するキーワードを検索したユーザーに対して、検索連動広告を用いて相談窓口が設置されているページを表示し、自殺のハイリスク層に支援を届けるインターネット上でのアウトリーチ活動を行ってきました。

自殺関連用語の検索連動広告ガイドラインの公開などを通して、自団体のみならず幅広い事業者の方に実践していただけるようになりました。直近では、自殺以外の他分野領域にて、検索連動広告を用いたアウトリーチ活動を応用できるのではないかと、支援の幅を徐々に広げています。

自殺関連用語の検索連動広告ガイドライン
https://ova-japan.org/?p=4467

実はその検索連動広告ですが、非営利団体の方は無償で利用できる枠があることをご存じでしょうか?

Google では非営利団体向けにいくつかのサービスを無償で提供しており、その中のプログラムの一つである「Google Ad Grants」に申し込むと月に10,000 USDの検索広告を無料で利用することができます。

リソースが限られている非営利団体等にとって、無償の広告枠はインターネット上でのアウトリーチ活動を行うのに利用しやすいのではないかと思います。
一方で、団体側にウェブ広告運用の知識が必要だったり、Ad Grants特有の制限があることから、最大限の利用が難しいといった側面もあります。

今回は妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」にて相談支援を行っているピッコラーレ様と共同してAd Grantsを利用したアウトリーチ活動を実践いたしました。
「にんしんSOS東京」について少しご紹介します。(以下、ピッコラーレ様のホームページを参考にしています。)

産前産後の女性の死亡原因でもっとも多いのは自殺です。
そして、児童虐待死でもっとも多いのは生まれたその日になくなる命です。
これは、妊娠をだれにも相談できず、一人で抱え込み、社会から孤立したために、母子の安全が守られなかった結果であり、妊娠を社会から孤立させないために「にんしんSOS東京」の相談窓口があります。
「にんしんSOS東京」はにんしんにまつわる全ての「困った」、「どうしよう」に寄り添い、相談者が必要とする正しい情報や利用可能な社会資源を伝え、関係機関を探し、つないでいきます。

これらの妊娠にまつわる「困った」、「どうしよう」についても、毎日インターネット上で多数検索されています。
ピッコラーレ様から無償広告枠のAd Grantsを利用して、そのユーザーにアウトリーチできないかというご相談があり、今回共同してアウトリーチを行うことになりました。


実施した内容

Ad Grantsを用いたアウトリーチを実践するにあたっていくつか行ったことがありますので、ご紹介したいと思います。

1.Ad Grants(検索連動広告)の設定

ピッコラーレ様に相談を受付けているサイトに記載されている内容をもとに、相談の対象となる層を想定し、広告表示を行う検索キーワードを抽出しました。
今回は、「妊娠 したかも」、「高校生 妊娠」、「思いがけない 妊娠」など妊娠にまつわる100個程度のキーワードを選び、検索の趣旨ごとにキーワードを振り分けました。
Google上でこれらのキーワードや近しい意味の語句を検索した際に、振り分けたキーワードの意味ごとに、それに沿った広告が表示されるように広告の見出しや説明文を設定しました。
広告をクリックした際には、ピッコラーレ様の相談サイトへ移動するようになっています。
広告設定には当事者が読んで不適切と思われるワード・表現がないかといった観点からも事前に確認して設定しました。


図1. 検索連動広告のイメージ図
「妊娠したかも」などを検索すると、広告枠に相談サイトへのリンクが表示されます。

 

2.相談サイトの改善

 広告のリンク先にはメール、電話相談ができる相談サイトが設定されています。マーケティングで良く用いられている手法をもとに、より相談につながりやすくなるようなWEBサイト作りのため以下の点を変更いたしました。

  • どのページにも相談窓口につながるリンクを設置
    ページには妊娠に悩んでいる人にとって大切な知識や相談の事例に関するページがあり、それらのページにも相談方法へのリンクを設置しました。
    どのページでも、ユーザーがすぐに迷わず相談アクションが行えるようにと考え変更しています。
  • 相談に関わらないページへのリンクは極力減らす
    寄付に関するページへのリンクや、相談に関わらない情報提供に関しては極力減らし、ページを訪れた人が相談まで迷わないような導線づくりを行いました。

*これらの設定はベストプラクティスとまでは言えないですが、一般的にマーケティングで用いられている考え方をもとに改善提案をいたしました。

広告掲載結果

広告は2021年8月中旬から配信が行われました。
今回のブログでは広告配信の機械学習が行われた後の2021年9月から2022年2月の6か月間のデータについてご紹介します。

広告の表示、クリック数

広告設定後、妊娠葛藤相談に関わる検索が行われた際、半年間でおよそ6万8千回の広告表示、5210回相談サイトへの誘導が行われました。
(月当たりおよそ11,300回程度の広告表示、868回の相談サイトへの誘導を達成。)
妊娠に関わる検索をしているユーザーに多数の情報提供や、相談窓口情報の提示を行うことができたのではないかと思います。

図.2  2021年9月~2022年2月までのクリック数、表示回数、クリック率、費用の結果 特定非営利活動法人ピッコラーレGoogle広告管理画面より

広告による相談アクション

広告運用にあたり、サイト訪問ユーザーの相談アクション(電話相談ボタンのクリック、メール相談用フォームの送信ボタンのクリック)をコンバージョン(CV)として記録しました。
半年間でそのCVが141回*記録され、コンバージョン率2.71%(CV/クリック数)で、相談サイトを訪れたユーザーのうち一定数が、相談アクションを起こしたと想定されます。
これより、妊娠葛藤相談の領域でも検索連動広告を用いたアウトリーチの効果が期待できるのではないでしょうか。
またこれらが無償広告枠を利用して達成されたことも非常に重要な点だと思います。
*相談アクションは相談サイトでの行動(リンククリックなど)であり、実際の相談の受付件数とは異なります。

図.3  2021年9月~2022年2月までのクリック数、表示回数、コンバージョン数、コンバージョン率の結果 特定非営利活動法人ピッコラーレGoogle広告管理画面より

まとめ

特定非営利活動法人ピッコラーレ様と共同で無償検索広告枠Ad Grantsを用いた妊娠葛藤相談の領域でのアウトリーチ活動を実施しました。アウトリーチ活動は半年間で

  • 6万8千回の相談サイトのリンク表示(表示)
  • 5210回相談サイトへの誘導(クリック)
  • 141回の相談アクションを記録(コンバージョン)

の結果が得られました。これらより妊娠葛藤相談の領域でも、検索広告を用いたアウトリーチが一定の効果があるのではないかと考えられます。
これら以外の領域でも、検索広告を利用したアウトリーチの可能性にまだまだ期待できるのではないでしょうか。

また重要なことがもう一点あります。これらがすべて無償の広告枠を利用して実施されたということです。
通常は広告を出稿するためには一定の予算(月に数万円からなど)が必要です。非営利活動の場合、その予算の捻出が困難である場合もあるかと思います。
しかし、NPO法人などの非営利団体が利用できるAd Grantsを用いることで、無料で1万USDの広告枠を利用してインターネット上でのアウトリーチ活動を開始することができます。
(Ad Grants使用する手続きは必要ですが)

より広い領域で多くの団体が、Ad Grantsを用いてアウトリーチを実施することで社会的に非常に大きなインパクトが与えられるのではないでしょうか。
OVAのビジョンとしてもそのような社会になることが望ましいと考えています。
実現には様々な課題(広告運用の専門性、担当者の不在など)がありますが、ビジョン達成のためにこれらをどのように解決していくかできることを考えていかなければと思います。

 

参考

特定非営利活動法人ピッコラーレ ホームページ
https://piccolare.org/

妊娠葛藤相談 – 特定非営利活動法人ピッコラーレ ホームページ
https://piccolare.org/activity/pregnancy/

Google Ad Grants – 非営利団体向け無料 Google 広告
https://www.google.com/intl/ja_jp/grants/

 


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