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児童生徒のいじめ・自殺対策に取り組む民間団体が直面する課題とは。9/10開催オンラインイベントレポート

NPO法人OVAは、「自殺予防週間」の初日である9月10日に、児童生徒のいじめ・自殺対策に取り組む民間団体が今直面していることについて、オンラインイベントを開催しました。  

児童生徒のいじめ・自殺対策に向けた取組は、当法人が提供するブラウザ拡張機能「SOSフィルター」以外にも複数あり、各団体がこの難しい課題に対して試行錯誤しながら挑戦しています。一方で、前例は少なく、さまざまな障壁や困難があるのも事実です。

今回のイベントでは、一般社団法人RAMPS(ランプス)代表理事の北川裕子さん、株式会社マモル代表取締役CEOのくまゆうこさんが登壇。各団体のサービスや抱えている課題を知っていただくことで、少しでも子どもの自殺対策推進につなげていきたいと考えました。

この記事では、一部となりますが、当日の内容についてご紹介できればと思います。

マモル・RAMPSのサービス概要について

イベントの冒頭、まず各団体のサービスについて紹介が行われました。最初に説明したのは、いじめ・不登校防止相談プラットフォーム「マモレポ」を提供するくまさんです。

マモレポには、子どもからの声をなるべく早く吸い上げることを目的とし、いじめ等の悩みを24時間いつでもオンラインで投稿できる「マモレポポスト」、教育委員会やカウンセラーと双方向のやりとりができる「マモレポメッセージ」があります。

被害者だけではなく、「見た」「聞いた」「参加した」というように傍観者・観衆・加害者の立場からでも報告や相談が可能。心理的ハードルを下げるため、匿名での報告・相談できるようになっている他、小学校低学年の児童でも使いやすい設計にしたといいます。

次に説明したのは、自殺予防のためのスクリーニングツール「RAMPS」を提供する北川さんです。RAMPSは子どもが自殺の危機について語ること、大人が子どもに自殺の危機について聞くことを助けるツールとなっています。保健室に来た生徒はタブレット上から、身体不調や食事、睡眠など生活に関すること、うつ症状などのこころの不調、希死念慮や自傷行為、いじめ、相談相手がいるかなどについて質問に回答します。

養護教諭をはじめとする教員は自動集計された結果を見て、問題があると思われる項目(質問指標により陽性判定された項目)を中心に詳しく質問し、所見を記録。これらをもとに生徒への対応を検討します。「高度自殺リスク」に該当する回答があった場合は即時に、あらかじめ登録された教員にアラートメールが一斉に発出される仕組みもあります。

北川さんは、RAMPSの特徴の一つに「根拠のあるスクリーニング指標を中心に採用していること」を挙げました。科学的根拠が確認され、医療機関などで広く使用されている指標を中心に採用したほか、養護教諭や教員、児童生徒に意見をもらったり、自殺予防の研究者・精神科医の監修のもと質問文を一部調整したり、回答画面は子どもにとってなるべく違和感なく、回答しやすいものになるよう改善を重ねたりしたといいます。

2024年度現在、すでに約160以上の中学校・高等学校等で導入実績があるそうです。

SNSを含めたメディアが子どもたちに与える大きな影響

続いて行われたパネルディスカッションでは、「現場から見えてくる子どもの自殺の現状」「サービス展開で直面している課題と今後の展望」について議論が行われました。

北川さんはまず高校生1万人のデータを分析した研究結果から、自殺の危機が迫った子どもほど、助けを求めないことについて言及。「まさかこの子が」という言葉はRAMPSを導入するどの学校からも聞こえる言葉といい、周囲にいる大人の関わりの重要性を指摘します。

北川「子どもたちは成長の途上にあります。メディアや友人など様々なものの影響を受けやすいです。また、問題解決の選択肢をそう多くは持ち合わせていません。

特にSNSを含めたメディアの影響は強く、大手報道機関はWHOのガイドラインを守るようになりましたが、自殺の場所や方法に関する情報が出ると、模倣とも捉えられるような行動をしたりと影響の受けやすさを、RAMPSの回答を見ていても感じるところです。周囲の大人が自殺以外の多様な選択肢、つまり生きることの促進要因となるような具体的な手立てや対処法といったことを具体的に、子どもたちに提案しててあげたり、一緒に考えられるいいなと思います」

一般社団法人RAMPS代表理事の北川裕子さん

くまさんは自治体のSNS分析にアドバイザーとして関わる中で、自傷やOD(オーバードーズ)等の動画が多く投稿されるようになったことへの影響について語ります。

くま「例えば、ODであれば方法やどのように薬を入手するかといった内容を、カジュアルに伝える動画を目にすることがあります。そういった動画を日常的に見るようになると、感覚が麻痺してきて、何か辛いことがあったときに思い出してしまうことにつながります。SNSの特徴として、何度か関連する動画を見ると、似た動画がレコメンドされるようになるため、北川様が話すように、メディアが与える影響はより強くなっていると感じます」

株式会社マモル代表取締役CEOのくまゆうこさん

サービス展開をするするでの課題と今後の展望

次のトークテーマとなったのは、サービス展開をするうえで直面している課題と今後の展望です。北川さんは「児童生徒の自殺リスクが明らかになったとき、学校と保護者だけで対応しきれないこと」について言及しました。地域の機関と繋がり、多くの人が子どもを支える体制が求められるとし、一例として長野県の事例を紹介いただきました。

長野県では、学校などが子どもの自殺リスクを察知した際、児童精神科医や弁護士などで構成される「子どもの自殺危機対応チーム」による実務的な支援を受けることができます。2022年度からはRAMPSを活用して子どもの自殺リスクを察知し、評価や支援方針の検討を行う体制も構築されています。このように学校が生徒支援の相談要請を行える「こども・若者の自殺危機対応チーム」が、早期に全国へ設置されることを望むとしました。

RAMPSとしては今後、蓄積された膨大なデータを解析し、若年層の精神不調や自殺リスクの実態解明、より精度の高いスクリーニング指標の構築などを目指す、と語りました。

くまさんは、いじめや不登校、自殺に関する問題は重要視されるようになったものの、他の領域と比べると国からの支援がまだまだ行き届いていないことを課題として挙げます。対策を推進するため、より多くの方々に関心を持ってもらえるよう、情報発信を続けていきたいとします。

また、事業としては子ども向けだけでなく、「教職員の業務負担軽減に向けた伴走支援や、保護者向けの情報交換用コミュニティの運営などにも注力していきたい」と語りました。

ご案内

イベント当日は約50名の方にご参加いただきました。ありがとうございました。本レポートでは詳しくご紹介できませんでしたが、NPO法人OVAでも、児童生徒の自殺対策に向けた1人1台端末向けの無償サービス「SOSフィルター」を展開しております。

SOSフィルターとは、児童生徒が1人1台端末で深刻な悩みに関するワードを検索した際、相談窓口やセルフケアに関する情報をプッシュ型で届けられるブラウザ拡張機能です。

キーワードは、「自殺」「学校での人間関係(いじめ等)」「家庭での人間関係(虐待等)」「性暴力」「自傷」「精神疾患」と計6つのカテゴリーで、計4796個を設定。2024年9月現在、「GoogleChrome」と「Microsoft Edge」ブラウザに対応しております。

今回、ご登壇いただいた2団体を含め、下記にサービスサイトへのリンクを記しますので、教育関係者の皆さまはご検討いただけますと幸いです。また、各サービスに共感いただいた方は、よろしければお知り合いの教育関係者の方にご案内いただけると嬉しく思います。

<登壇団体のLPサイト※50音順>
SOSフィルター
マモレポ
RAMPS

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