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【NPO経営メモ】非営利団体の活動資金10分類 ーOVAの位置づけは?ー

NPOをはじめとする非営利団体は、事業そのものから収益を上げることが難しいことが多く、資金を集める必要があります。
どのように必要な資金を入手するかは、ビジネスの分野ではビジネスモデルとして構築され、分析や評価が可能になっています。
一見ビジネスモデル化が難しい非営利事業についても、いくつかの分類ができると海外の調査から分析されています。

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今回取り上げるのは、「非営利団体の収入モデル10類型」という題の海外の調査です。
「Ten Nonprofit Funding Models」Stanford Social Innovation Review, 2009
https://ssir.org/articles/entry/ten_nonprofit_funding_models

とても参考になる資料だったので、中身をざっくりまとめてOVAにも当てはまてみたいと思います。

NPOの資金調達にビジネスモデルは存在するのか?

普通の企業のビジネスを説明するときに、過去に成功した事業モデルを使うことは多々あります。
ざっと思いつくもので以下のようなものがあると思います。
・ひげ剃りの「替え刃モデル」:ひげ剃り本体を安く売って、消耗品の替え刃で儲ける。
・iPodの「逆替え刃モデル」:「替え刃モデル」とは逆にiPod本体を高く売って、音楽は格安で(1曲100円前後)提供する。
・GUの「低コスト戦略」:低価格路線を目指し、価格に敏感な消費者を獲得する。

このようなビジネスモデルを企業の事業の説明に使うことで、その企業がどのような市場で、どのように成功したいのかを分かりやすく説明できます。
そしてそれによって従業員の意思決定や、投資家の理解促進につながります。

しかしNPOをはじめとする非営利団体では、活動資金をどのように集めるのか、営利企業のように分かりやすいモデルがありません
そもそも資金源が寄付・助成金・委託など多様すぎて、モデル化するのが難しいのかもしれませんし、営利企業と違ってサービスや商品を提供する方から直接お金を頂く形ではないことも要因としてあると思います。

そのような現状を受けて、今回取り上げる調査では、1970年以降に設立された米国の大規模(年間予算50億円以上!)の非営利団体144団体を対象に、活動資金の調達モデルの分析が行われ、それらが10分類されました。
日本の非営利団体をこのようなモデルで説明するというよりは、今後どのような活動資金の調達モデルを目指すのかを考える参考にしたいと思います。

活動資金調達の10分類

以下の3つの基準を考慮して、非営利団体が分類されています。
1.活動資金源の種類(個人寄付・企業寄付・行政委託など)、2.資金提供者の種類、3.資金提供者の動機

以下の10の分類のうち、1~3が個人寄付が中心、4が少人数の個人寄付が中心、5~7が政府・行政が中心、8が企業が中心、9・10が多種類のミックスで構成されています。

各項目の事例もありましたが省略しています。
(各分類の日本語訳が微妙なのはご容赦ください、、)

1.Heartfelt Connector 共感つながり型

社会全体が関心を持ちやすい社会課題を身近に感じてもらって、ボランティアや少額の寄付を集めて活動を行います。
主に環境、国際協力、医療福祉などの分野に多く見られます。
チャリティイベントや市民参加型のボランティアで広く色々な人とつながりを作ります。

2.Beneficiary Builder 次世代引き継ぎ型

自分が過去にサービスを受けて、それを次世代に引き継ぐために資金を調達し活動を行います。
分かりやすいのが、医療機関や大学です。
個人的な経験をもとに団体と人がつながるので、長期的な関係が構築される、寄付の満足度が高くなりやすいのが特徴です。
資金は施設の充実、研究プロジェクトの促進、財団の設立などに使われます。

3.Member Motivator 自分ごと共助型

日常生活に密接にかかわるテーマについてお金を出し合って、活動を行います。
米国では教会や芸術、文化活動の分野で多く見られますが、日本だと寺社への寄付、PTA、地域の美術館などでしょうか?
寄付した人が、生活の中でメリットを受けられるのが特徴です。

4.Big Bettor 少数大口投資型

企業や財団などが、関心のある特定の社会課題を解決するために大口の寄付を行い、活動をサポートします。
米国だと医療研究や環境問題に多く見られるようです。家族財団(米国内に約4万団体※1)
や企業財団が多い米国ならではの事情も大きいと思います。

大規模な出資によってインパクトが測定しやすい分野に出資が集まるのが特徴です。

5.Public Provider 公共事業請負型

国や地方行政が公共事業として行っているサービスを請け負う形の活動です。
住宅、対人援助、教育などの社会的サービス分野に多く見られます。
市民活動由来のNPOが実施することで、柔軟で市民ニーズに合ったサービス提供が可能になります。

6.Policy Innovator 公共サービスイノベーター型

既存の公共事業では解決できなかった課題を先進的な手法で解決する事業に、国や地方行政が一部資金提供する形です。
5.公共事業請負型が、すでに行政が行っている事業の請負なので、区別が必要です。
生活困窮者支援などの分野で見られ、OVAの活動も(おそらく)ここに分類されます。
既存の社会課題への解決を先進的かつ低コストで実施し、成果を測定
する必要があることが特徴です。

※OVAの取り組みについてはこちら

7.Beneficiary Broker 公共事業調整型

国や地方行政が市民にお金を提供する市場でサービスを提供し、収益を得る形です。
住宅、医療、教育、学資ローンなどが中心になります。
このような分野では国や地方行政が、個人が支払うお金の一部を負担します。
日本でいうと、3割負担の健康保険のイメージでしょうか?


健康保険に入っていれば3割負担で病院を自由に選べるように、
サービスを受ける人が自由に選べるようになるのが特徴です。

サービスを提供する側(病院など)は料金を受け取り収益を得ます。

8.Resource Recycler 資源リサイクル型

企業や個人からの現物寄付を集めて、必要な人に配分する形の事業モデルです。
市場に出せなかったものや、経営判断上(収益が見込めないなど)出したくないものを寄付として受け取り、必要な人に届けます。
主に国際間の医療、食料、栄養、農業の分野に多く見られます。
運営費として通常のお金の寄付も受け付けているところが多いです。

9.Market Maker 取引市場調整型

寄付をしたい人がいるが、法律面・倫理面で資金の提供ができない分野を仲介することで活動を行うモデルです。
主に臓器提供や医療の分野で見られるそうですが、日本と法規制や事情が大きく異なるようで、読んでいても詳しくわかりませんでした、、
事例ではThe American Kidney Fundが取り上げられていたので、詳しい方がいたら教えて頂ければ幸いです。

10.Local Nationalizer 地域団体連携型

地域で活動する団体が全国規模で連携するモデルです。
教育、貧困、地域コミュニティに関する分野で多く見られ、地域団体ごとに個人や企業寄付を中心に調達します。
日本版も実施されているTeach for Americaがモデルとして取り上げられています。

この分類をどう活かすか

上記で見てきたように、活動の分野や内容によって資金調達がしやすいモデルは異なります。
さらに言えば、活動の目標やビジョンによって目指すべき資金の調達方法も異なってくるかと思います。
団体の活動のビジョンとともに、資金調達面のビジョンも一緒に考える必要があります。

最後に

OVAの場合は6.公共サービス分野(自殺対策)でイノベーションを起こし、
それが評価されて国や地方行政が導入を始めている段階にあります。

しかし、この問題の根本的な解決のためには「川上」での支援の充実が必要だと考え、
2017年下期から川上の問題の調査と、解決のための新規事業を開始しています。

この事業を通して、対人支援のイノベーションを新たに起こしたいと考えています。

新規事業の特設サイトを開設していますので、
そちらから私たちの取り組みをご覧頂けると嬉しく思います。

http://outreacher.ova-japan.org/

脚注等
※1 http://foundationcenter.issuelab.org/resource/key-facts-on-family-foundations-2010.html


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