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福祉領域におけるAIの利活用を考える。ChatGPTを活用した「AI秘書」を社内に導入してみました

2022年11月、ChatGPTが公開されて以降、「生成AI」のブームが到来しました。

ChatGPTは、APIを公開したことによって各種サービスの開発が進められている他、直近ではGoogleやMicrosoftなど大手IT企業も取り組みを加速しています。

OVAは、「支援へのアクセスを阻害するあらゆる障壁をとりのぞき、誰もが支援にアクセスできるフラットな社会システムを創造する」というミッションを掲げ、これまで検索連動広告を活用した「インターネット・ゲートキーパー事業」などを展開してきました。

ミッションの実現に向けては、検索連動広告に限らず、さまざまな新しいテクノロジーを活用することが求められると考えています。「AIの利活用」もその一つです。ただ、事実と異なる不正確な回答を生成する「ハルシネーション」のように、普及するうえで課題は多くあり、生じるリスクに対しても十分に検討し、適切な対策を講じなければいけません。

そこで、OVAでは「対人支援・福祉領域におけるAIの利活用とリスクを考える会(仮)」を立ち上げ、勉強会の開催やガイドライン作成に取り組むことを決めました。今回は、最初の取り組みとして始めた勉強会について、レポートしていけたらと思っています。

ガイドライン作成に向け、まずは「知ること」から

OVAの社内用AI秘書「サポットくん」


対人支援・福祉領域では現在、セルフカウンセリングやアセスメントの領域で既にAIの活用が進んでおり、ChatGPTをもとにしたAIセルフカウンセリングが既にリリースされています。また、欧州ではAIによって治療内容が患者ごとにカスタマイズされた、うつ病患者に対する認知行動療法のプログラムが保険適用された事例も登場しています。

ただ、いきなり相談業務にAIを活用するのは難しいのも事実です。そもそも相談業務のどの部分をAIに置き換えられるのか、倫理的・法的・社会的にどのような課題があるか、そしてその課題をどうクリアしていくのか、検討すべきことは多くあります。特に、”相談”そのものをAIで代替するのは、議論を慎重に進めなければいけませんし、技術的にも難しいです。

これらの技術的な課題は対策方法があったり、これから発展を遂げてそのリスクが緩和される可能性がありますが、対人支援領域での利用においてどんなリスクがあり、そのリスクの大きさを評価できるようにするのも、利活用を進めるうえで必要かと思います。

一方で、AIを日常的に活用する方はまだ少なく、OVAとしても業務でAIを活用した経験はありません。そこで最初からハードルの高い相談業務へのAIを適用するより、その他の事務的な業務の中でAIを利用してみようと、社内で実践するため「AI秘書」導入を決めました。

メール作成やアイデア出しなど、AI秘書の活用事例

AI秘書の導入にあたり、最初に行ったのは社内向け勉強会の開催です。プロジェクトを担当するアウトリーチ部の三崎・中村が中心となって企画を進め、2023年5月に実施。社内AI秘書の概要から利用方法、活用事例、利用するうえでの注意点などを紹介しました。

勉強会では、まずAI秘書の概要から説明しました。OVAで導入したAI秘書は、ChatGPTを利用した職員向けのチャットボットです。Google Chatから職員のみ利用することができ、チャットで投げかけられた文章に対して、ChatGPTが返信をしてくれます。

活用事例としては、メールや会議アジェンダなどの文章作成アシスタントとして利用したり、アイデア出しをしてもらったり、英文の作成・校正などを想定しています。

同じくプロジェクトを担当する中村は、「エクセルの詳しい活用方法など答えが既にあるものは正確に教えてくれる一方で、メールの返信案など入力の仕方を工夫しないと、まだ思うような答えが返ってこないものもある」と、これまでの実践を話してくれました。

勉強会の内容もAI秘書に考えてもらいました。OVAではAI秘書の名前を「サポットくん」としていますが、この名前のアイデア出しもサポットくんが行っています


勉強会の最後に、三崎からは利用上の注意点とガイドラインに関する説明が行われました。例えば、ガイドラインの観点では個人情報や秘密保持義務を課されている情報、相談者の情報などを入力しないこと、生成された内容には虚偽のものが含まれている可能性があるのを理解しておくこと、著作権や権利関係の侵害に気を付けることなどが挙げられます。

開催後行ったアンケートでは、前向きな意見は多かったものの「まだ活用のイメージができない」という声も多かったため、より具体的な活用事例の紹介が今後できればと思います。

実践をもとに研究を行い、「ガイドライン」の作成へ

プロジェクト全体の今後としては、社外も巻き込んだ勉強会も開催していく予定です。相談業務にどう生かすかだけでなく、技術や情報セキュリティ、法制度の面でも講師を招き、知見を貯めていきたいと考えています。また、中長期的には勉強会での実践をもとに、研究を行い、ガイドラインの作成までつなげていけたらと思っています。

具体的なことはまだ決まっていませんが、例えば「AI相談のニーズを調査すること」などが挙げられています。AIによる相談を一般の人々は求めているのか。AIに相談したい内容と人に相談したい内容に違いはあるのか。違いがあるとしたら、その要因(年齢、性別、負担感の知覚等)は何か、といった内容が想定されます。研究が進んだタイミングで情報発信ができたらと思うので、ご関心のある方はSNSメルマガをぜひフォローください。

なお、AIは急速に技術が発展しており、それに伴って今回のブログに記載された情報が変わる可能性があることをご了承ください。


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