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銃規制法が自殺予防に与えた影響:米国の研究から

政策や社会運動などの社会の動きが、実際に社会に与えた影響を測ることは可能なのでしょうか?
ブログで以前も取り上げた統計手法Synthetic control methodを用いて、実際の政策の効果測定を行った研究について考察しました。

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今回は2018年に発表された論文「1998年のマサチューセッツ州銃規制法が自殺に与えた影響」について取り上げます。
以前の記事社会運動の定量的分析と同様、synthetic control methodを使って分析された内容です。
実際に銃規制されたマサチューセッツと、規制されなかった場合の「仮想マサチューセッツ」での銃による自殺者数の変化を比較して、「銃規制法が自殺を減らしたか」を統計的に証明する試みです。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165176518304609

米国の銃自殺の概要

CDCによると、米国では1994年から2016年の間に、死亡率のうち自殺が占める割合は25.4%上昇しています。
2016年の自殺者数は約45,000人で、10番目に多い死因となっており、その約半数は銃によるものです。
銃による自殺の死亡率は90%以上と手段別にみると最も危険で、銃へのアクセスは自殺の大きなリスク要因であることが分かっています。

銃の規制と自殺への影響

銃へのアクセスを制限すると自殺数が減少することは、既存の研究からもわかっています。
1996年オーストラリアの銃規制法や、2006年イスラエル軍兵士の休暇中の銃持ち出し禁止令などによって自殺者数が減った研究結果が見られます。

マサチューセッツの銃規制法の概要と影響

1998年マサチューセッツでは、銃規制に関する23の法律(主に売買への規制強化)が施行されました。

購入の年齢制限(21歳)、安価なジャンク品販売の禁止、保管の刑事責任強化、販売相手の精神疾患履歴の確認、安全訓練の義務化、盗難や紛失の届け出義務化、携帯の規制、暴力犯罪やDV加害歴があるものへの販売規制
などが定められ、銃へのアクセスが大幅に限定されています。

法規制の影響

この法規制によって銃による自殺が減ったことを証明するために、規制法施行後のマサチューセッツ州の自殺率の変化と、規制法が施行されなかったと仮定した「仮想マサチューセッツ州」の自殺率の変化を、1980年から2007年の期間で比較します。
「仮想マサチューセッツ州」の自殺率の変化モデルは、アメリカの他州のデータを統合して作られました。
1980年から2007年の、マサチューセッツ州以外での銃自殺率のデータから、銃規制がなかった場合の数値の変化を推測しています。
実在と仮想を比較した結果、法規制以前の銃による自殺率に大きな差は見られなかったものの、1998年から2005年までは、実在マサチューセッツ州での銃自殺率は有意に低下しています。

つまり、銃規制は一時的に銃による自殺を減らす効果があったことが示唆されます。
1999年から2007年にかけて、銃自殺でなくなる方が436人減少したと推計されました。

統計を社会課題解決に活用する

今回の研究で採用されたsynthetic control methodは、ある特定のイベントが起きなかった場合の仮想モデルを作り、実際の現象と比較することで、イベントの影響を推測する統計手法です。

自殺予防の分野では、ある出来事や自殺予防的な取り組みが「自殺を減らした」ことを証明するのは極めて難しいです。

synthetic control methodのような研究手法を用いることで、自殺予防以外の分野でも、影響や効果の測定が難しかった取り組みを評価できるようになる可能性があります。
社会的インパクト評価やEBPMなど、民間でも公共でも成果を測定することが求められている現在、このような手法も一つの参考指標として、導入することも必要になってくるでしょう。

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 2019年11月18日

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