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オンライン×メンタルヘルスケアの最新動向:Slackを使ったコミュニティ

OVAの事務局ブログをご覧いただいてありがとうございます。

事務局では、普段より業務に関係する調べものを(半分趣味で)行っています。
今回は「オンラインを活用したメンタルヘルスケアは、海外でどのような事例があるのか?
という疑問から見つけた内容を紹介します。

取り上げるのは「Slackコミュニティを使ったメンタルヘルスケア」という題の記事です。
https://medium.com/@ZachSchleien/slack-community-for-mental-health-blending-health-and-technology-3d196db73367

そもそもSlackとは?

Slackはメールアドレスだけで無料で登録できるビジネスチャットツールです。
Google Driveや会計ツールとの連携や、チャットの検索ができるなど、今までのツールに加えてスピード感を出しやすいのが特徴と言われています。
公式→https://slack.com/intl/ja-jp/lp/two?geocode=ja-jp#welcome

共有チャンネルの作成も可能なので、社内でのやり取りだけでなく、取引先の人も入っているグループを作ったり、共通のテーマに関する誰でも入れるコミュニティを作ったりするなど、広く活用されています。
ビジネスチャットの中心となりつつあるSlackですが、最近メンタルヘルスの分野でも活用され始めました。

オンラインとメンタルヘルスの相性

メンタルヘルスの問題は、誰もが抱える可能性がある問題です。
日本でも、2002年の研究ですが、12ヵ月以内に精神疾患を経験した方は8.8%(※1)であるという研究結果もあります。
同研究では約7割の人が誰にも相談していないことも分かっています。
メンタルヘルスは、誰もが抱える可能性を持ちながら、相談しにくい問題であると言えます。

そのような社会環境のため、「見られたくない」「知られたくない」と思って、相談機関に足を運ぶことの難しさは想像できると思います。
相談しにくい背景と、スマホなどのモバイルデバイスの普及も手伝い、オンラインで完結するメンタルヘルスケアが普及し始めています。

※1 参考にした文献リストと日本語での記事→https://www.e-heartclinic.com/kokoro/byouki/ippan_morbidity1.html

メンタルヘルス×オンラインの実際の取り組み

アメリカで活動するNPOであるCrisis text lineは、オンライン×メンタルヘルスの世界最大規模の団体です。
電話番号を使ったSMSから文章での相談ができる仕組で、いじめ・犯罪被害・孤立や気分の落ち込み・「死にたい」などの広く危機的状況にある人から相談を受け付けています。
2013年から累計7,000万通以上のメッセージのやり取りを行い、相談者の75%以上が25歳未満という、若者との相性の良さが結果で出ています。

日本でもココロワークスcotreeがオンラインカウンセリング事業を展開しており、ビデオ・電話・文面でのカウンセリングを行っています。
また、うつ病の方向けのU2plusというオンラインコミュニティも存在するなど、オンラインを活用したメンタルヘルスは広がりを見せています。

支えあうオンラインコミュニティ「18%」の創設

この記事の筆者であるZach Schleienが作ったSlackコミュニティは、前述のサービスとは違った特徴を持っています。
精神疾患を持っていた近しい友人が自殺した経験をもとに、精神疾患を持つ家族への教育プログラムを作成していく中で、その延長としてオンラインコミュニティの形成に乗り出しました。
アメリカ人の18%が精神疾患を抱えている(※2)ことから、「18%」という名前を付け、メンタルヘルスのスティグマをなくすために、経験を共有して情報交換できる場を作ったそうです。

コミュニティ内では、話題ごとに色々なチャンネルが作られて、メンタルヘルス以外にも感情のポジティブな変化について話したり、好きなアーティストやネットフリックスの映画について話したりと、色々な形で人間関係を築く場になっているといいます。

※2 https://www.nimh.nih.gov/health/statistics/mental-illness.shtml

スティグマにどうかかわるか

「大学の心理相談室に入るところを見られたくない」「職場近く(自宅近く)の心療内科には行けない」。
メンタルヘルスに興味がある方は、こういった話を聞いたことがあるかもしれません。
今回紹介した18%は、こういった社会的偏見ゆえにメンタルヘルスサービスにアクセスできない問題への解決としての側面があります。
(もしかしたら、本人たちの持っている社会的偏見を打ち消して、実社会のサービスへのアクセスを促す効果もあるかもしれません。)

OVAも、「死にたい」という気持ちを周囲に言えない方を対象に、匿名性や時間の融通など利用者にとって利点が多いネット相談を進めてきました。
18%やOVA、各種オンラインのサービスは、テクノロジーでスティグマを軽減して、利用を促しているということです。

OVAが現在進めている調査プロジェクトのインタビューでも、他の支援団体からスティグマへの問題意識についてお話を聞くことが多くあります。
「自分が公的サポートの対象だと思いたくない」「人に助けてもらうことは恥だ」といった価値観を持っていることで、本来受けられる(保障されている)サポートが受けられないことが、様々な分野で見られます。
OVAは調査プロジェクトを通して、社会的な価値観が自分の価値観になって行動が制限されるこの構造を明らかにして、解決策を検討していきます。

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