お知らせ

児童の自殺対策を目的としたChrome拡張機能「SOSフィルター」。GIGA端末での活用に向け、試験導入を実施

NPO法人OVAは、児童生徒の自殺対策を目的としたChrome拡張機能「SOSフィルター(β版)」を開発し、11月1日より試験導入を開始しました。導入したのは、私立の中学校・高等学校(対象生徒数計981名)で1人1台配布される学習用端末(以下、GIGA端末)です。その結果、30日間で自殺関連用語が計24回検索されていることが分かりました。

適切な社会資源をプッシュ型で発信

「SOSフィルター(β版)」は、深刻な悩みに関連するワードを検索した児童生徒に、適切な社会資源などの情報をプッシュ型で発信するChrome拡張機能です。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」では、児童生徒に対して1人1台の学習用端末整備が進められました。SOSフィルターは、このGIGA端末での活用を想定し、開発しています。

具体的には、あらかじめ登録された深刻な悩みに関するワードをGIGA端末で検索した際、その悩みに合った相談窓口やセルフケアの方法をまとめたポップアップを表示。情報を提示したうえで、児童生徒の意思を尊重しながら次に起こすアクションをサポートします。

SOSフィルターの利用イメージ。テキストは、優しく語りかけるような言葉遣いや分かりやすい文章にすることで、中高生にも親しみやすい形としています

「SOSフィルター」を開発する背景

警察庁・厚生労働省が公開した統計によると、令和4年における児童生徒の自殺者数は514人と、過去最多を記録しました。こうした深刻な状況を踏まえ、国は「こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し、2023年6月には「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を取りまとめるなど、自殺防止に向けた取り組みを推進しています。

また、同年7月には文部科学省から各都道府県の教育委員会に対して、児童生徒からのSOS早期把握に向け、GIGA端末を活用した対策を求める通達を出しました。

OVAは、主に検索エンジンにて自殺関連用語を調べる自殺リスクの高い方々に対し、検索連動広告を通じてアウトリーチとインターネット相談を実施しているNPOです。2023年12月現在、40を超える自治体で検索連動広告を活用した自殺対策事業を展開しています。

児童生徒は、GIGA端末を活用してさまざまな検索行動をしており、ときには自殺に関連したワードが調べられているという報告もあります。当法人はこれまでの事業展開で培ったノウハウを活用することで、「リスクの高い生徒に、Chrome拡張機能を活用したプッシュ型の情報発信ができないか」と考え、SOSフィルターの開発を進めてきました。

現状のGIGA端末は、自殺に関連したワードを検索すると、フィルタリングで検索結果自体が表示されなかったり、管理者に通知されたりするなど、制限・監視的な対応がとられることが多いです。開発したSOSフィルターを導入することで、より適切な相談窓口につなげたり、児童生徒がセルフケアの方法を学ぶことをサポートできると考えています。

「虐待」や「いじめ」など検索キーワードを拡充へ

今回、SOSフィルターの試験導入にご協力いただいたのは、私立の中学校・高等学校(対象生徒数計981名)です。11月1日からGIGA端末に導入し、30日間で自殺関連用語が24回調べられていることが分かりました。自殺関連用語の中には、「死にたい」という気持ちを吐露するような内容から、自殺関連報道を調べていることが確認されています。

β版は、自殺関連ワードのみ(935個)に連動してポップアップが表示される仕組みとなっていますが、自殺には複数の要因があり、“川上からのアプローチ”も重要です。

事実、当法人が東京都の委託で行った調査研究(※)は、「虐待」に関連したワードを検索している人は虐待リスクが高いことなどが分かっています。そのため、今後は「虐待」や「いじめ」など検索キーワードの領域を拡充した形で、開発を進めていく予定です。

(※)参考:自殺対策に資する検索連動型広告の効果的な運用に関する調査研究報告書

また、試験導入の結果を分析後、来年度はアップデート版を無償で公開し、より多くの自殺リスクが高い児童生徒に支援を届けたいと考えています。


URL
TBURL
Return Top