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リーン思考はNPOに活用できるか -NPOとスタートアップの共通点-

OVAの事務局ブログをご覧いただいてありがとうございます。

事務局では、普段より業務に関係する調べものを勉強がてら行っています。
今回は海外の大手ファンドレイジング(寄付集め)サービスを展開するClassyの記事をご紹介します。
リーンスタートアップ思考はNPOに適用できるか」という内容です。

https://www.classy.org/blog/nonprofit-lean-startup-methodology

リーン志向とは

リーンスタートアップは、人・モノ・時間・金の限られるスタートアップ企業が無駄なく新しいビジネスモデルを開発して、市場で成功するためのマネジメント方法を指します。
2011年に、シリコンバレーで成功する企業の分析をもとに米国でベストセラーとなった本をもとにした考え方です。

リーンスタートアップの元となっているリーン思考で最も特徴的なのは、
仮説→構築→計測→学習のサイクルを早く回すことです。
ビジネスのもととなる顧客ニーズの仮説を立てて、まずはそのニーズを満たす最小限のサービスを低コストで構築します。
そのサービスを、流行に敏感だったり新しいものが好きな顧客に提供して反応を計測し、それを製品に反映させたり、そもそもの顧客ニーズ自体を見直したりすることで学習するというプロセスです。

これによって、最低限のリソースと迅速なスピードで効率的な意思決定を行えます。
開発したサービスが本当に顧客の問題を解決できるのか早い段階で検証でき、かつ早いサイクルで失敗と反省を行えるので、時間やお金の無駄を抑えつつ新しいビジネスの成功確率を上げられるといいます。

スタートアップとNPOは共通点が多い

このようなリーン思考を、NPOはどのように活用できるのでしょうか?
Classyの記事は、まずスタートアップとNPOに共通点が多いことを指摘しています。

共通点1.ミッションドリブンである

多くのスタートアップは設立から日が浅いゆえに、創業者の個人的な経験や不満、欲求など、事業が個人のストーリーと強く結びついています。
NPOなどの社会課題解決に取り組む組織も多くの場合、従業員は組織が取り組む問題に個人的・感情的に強いかかわりを持っていることが多いです。
このような、個人と事業の結びつきの強さは組織のミッション達成への強い動力になりえます。

共通点2.資金調達が存続に不可欠

スタートアップはサービスを開発して収益化するまでは、外部からの資金調達(投資)によって経営を続ける必要があります。
スタートアップが投資家から資金を集めるようにNPOも多くの場合は、寄付者から寄付を頂いて経営を続ける必要があります。

共通点3.見えにくいニーズに応える

スタートアップはまだ世の中にないサービスを開発することで、人々の潜在的なニーズに応えることが特徴です。
(例えばAirbnbができる前は、ネットを使って個人の家に「民泊」したいというニーズはありませんでした。今は「民泊」という言葉は一般的になり、「安く旅先の現地の家に泊まりたい」「自宅にいない期間を有効活用したい」というニーズに応えています。)

NPOも寄付を頂くという点に関しては、「特定の社会課題の解決に関わりたい」というニーズを、寄付というアクションによって実現している側面があります。

リーン思考からNPOは何を学べるか

仮説→構築→計測→学習の循環は、NPOの取り組む社会課題解決にも活用できる考え方かと思います。
例えばOVAの場合は、2013年に代表の伊藤が一人で活動を始めました。
当初、若者の自殺が多いことに問題意識を持ち、
1.若者が周囲に相談できずスマホで死にたい気持ちについて検索しているという仮説を持ち
2.検索連動広告、相談サイト、メール・電話・スカイプ相談をまずは構築、実施し
3.広告のクリック数や相談数、ほとんどすべての相談者がメールを希望している事実や相談による相談者の変化を測定し
4.死にたい若者にとって価値があると学習して

法人化と拡大に至ったという循環が見られます。

OVAはいつまでリーン志向でいられるか

今後OVAは、自殺以外の分野でも積極的に支援を届ける仕組み(アウトリーチ)を広げていきます。
この取り組みは、自殺対策の相談の中で浮かび上がった「もっと早く支援につながっていたら死にたい状況にならなかったのでは」という学習と仮説をもとにスタートしています。

事業の内容としては、OVAが他の相談機関にコンサルティング的なかかわりをして、アウトリーチ施策を一緒に作っていくようなイメージです。

このような取り組みは、今のところ前例が見られません。
ニーズがあるのか、効果があるのかはわからない分野でこそ、リーンの考え方は活かせると考えています。
現時点で、アウトリーチは様々な分野で必要とされており、支援機関が実施する意義があるという仮説をもとに、パイロット的なプロジェクトも実施しています。

新しい事業を行う中で学習と仮説が出てきて、それをさらに新しい事業によって解決するという循環がこれからも発生してくると思います。
リーンスタートアップはすでに時代遅れと言われることもありますが、NPOが複雑に絡み合う社会課題の解決に取り組む組織である以上、小さなリソースから始められるリーン的な考え方はこれからも必要とされるでしょう。

執筆者
事務局ファンドレイザー
土田毅 プロフィール

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