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NPOをマーケティング的に分析 ー社会福祉とフレームワークー

OVAの事務局ブログをご覧いただいてありがとうございます。 事務局の土田です。

OVAでは福利厚生の一環として、法人でグロービス学び放題に加入しています。 マーケティングや経営戦略について体系的に学んだり、自分のスキルセットの整理に活用中です。

今回は、グロービスで学んだマーケティングの枠組みを使って、活動開始当初(2014年ごろ)のOVAの事業を振り返って分析してみました。
社会課題解決の新しい取り組みがスタートするときに、環境をどうとらえるか、どのような人にどのようなサービスを提供するかを考える視点の参考になれば幸いです。
※この分析は、全て2019年現在から2013年を振り返ったものです。活動開始当時このような分析は考えていなかったので、すべて後付け的に分析した内容であることを念頭に入れて頂ければ幸いです。

主な構成

  1. 問題構造
  2. 環境分析
  3. 対象者分析
  4. サービス設計
  5. その後の展開

問題構造

OVAの代表伊藤が活動を始めた時、問題意識は「若者の自殺の深刻さ」でした。 20代の死因の約50%を占めており、国際比較しても非常に高い水準となっていました。

元々精神保健に関わっていた伊藤が2013年に問題意識を持ち、検索連動広告で情報を提供してネットで相談を受ける活動を始めました。 いくつもの生活課題を抱えながら周囲に相談できず、スマホに打ち込む若者に支援を届けるための取り組みです。 自殺という社会課題は非常に複雑で、様々な切り口から解決の取り組みがあります。

OVAがどの切り口から関わるべきかを考えるため、この問題を定量的に分析すると下図のような実態が見えてきます。
実際に亡くなる方の統計数値は厚労省や警察庁から発表されています。 その手前に病院搬送、さらに手前に未遂者が推定50万人おり、その内20~30代が7割を占め、半数が複数の生活課題を抱えていると推計されます。※1 さらにその内誰かに相談できている人は50%、相談できていない人は50%と推計されており※1、OVAは誰にも相談できていない人たちに支援を届けていると言えます。 (全て年間の数値) problem-structure ※1 日本財団の調査より https://www.nippon-foundation.or.jp/news/pr/2018/47.html

取り巻く環境と自分たちにできること

2013年に活動が始まった当初、この社会課題を取り巻く環境はどのようなものだったのでしょうか?SWOT分析で外部/内部、強み/弱みを考えてみました。

まず政策的な環境として、2006年に自殺対策基本法が施行されたことが挙げられます。これによって社会的な問題として、国や地方公共団体が主体として対策を進める環境が作られました。

2010年の「新しい公共」を推進する動き、2011年の大震災以降の価値観の変化などがあり、「社会課題解決」「ソーシャルセクター」といった考えが社会に広まり、社会課題解決に取り組む人の多様化が進んだ印象があります。

技術的な進歩はどうでしょうか。Google検索に広告を掲載できるAdwordsは、開始から13年を迎えていました。誰でも使えるオープンソースのブログソフトWordPressも生まれて10年経っていました。 ITを専門とする人でなくても、使い方を調べれば広告を掲載してサイトを作れるほど、これらの技術が広く普及していたのが2013年です。

その反面、福祉分野で同じような形でテクノロジーを活用している取り組みは多くありませんでしたそのため「ネットを使って生活課題を抱えた人を支援する」という取り組みの先駆けとなり、ノウハウを蓄積できたと言えます。そしてまだ取り組みがない分野で活動するにあたって、リスクを回避したり、支援の質を確保する必要がありました。
同じような取り組みをしている人がいなかったので、伊藤の持つ精神保健福祉士の資格とキャリアのノウハウを活用しつつ、外部の研究者とのパートナーシップを結ぶことで、支援の質向上に取り組みました。

このように、 社会として課題解決を進める環境が整っていた 技術的なハードルが下がっていた 先例のない取り組みだった 既存のノウハウや学術的な知見と連携できた という4つのポイントが抑えられていたため、OVAの活動が広がる環境が整っていたと考えています。 swot

誰に何を提供してきたか

ネットを使った福祉支援を実施できる環境が、政策的、技術的に整っていました。 そして、福祉分野の実践的・学術的なノウハウを動員して、実施できるノウハウがあり、OVAの相談支援は始まりました。

この相談支援は、誰に届いていたのでしょうか?この点をセグメンテーションとポジショニングで考えてみました。

OVAのビジョンから、相談につながりにくい若者を中心に支援を届けたいという前提があり、スマホを使ったアプローチは理にかなっていたと言えます。
さらに、Googleで生きづらさについて検索する方なので、周囲に悩みを相談できない、日常的にネットを使う、生きづらさの情報を集めている方という絞り込みができます。

このように支援を届けたい方を特定したうえで、既存の相談支援との違いを考えてみました。
検索した方にだけ情報を届ける(ハイリスクアプローチ)という面で、ポスターやチラシで相談窓口を周知する相談サービスとはアプローチがことなり異なり、相談者も分かってくることがわかります。 支援方法も、感情面にフォーカスした傾聴だけでなく、生活課題の整理や解決を重視したソーシャルワークを行っています。
インターネットを用いてピンポイントにリーチし、心身の健康状態や生活上の課題を見立てるところまで行うサービスは、前例がありませんでした。
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どのように提供するか

孤立したネットユーザーの若者に、ピンポイントで生活課題解決の相談支援を提供するという、サービスの大枠が見えてきました。
さらに詳しく、どのようにそれを提供しているのか分析してみます。ここでは、マーケティングの4Pと3C、そしてDECAXモデルを使って分析してみます。

相談の最も重要な価値は、危機的な状況からの離脱と周囲に言えないことの吐露であると考えています。
このような価値を孤立している方に届けるためには、安心感や使いやすさが必要です。
のため、オンラインで匿名で相談できるようにする、共感的な内容の相談サイトを開くといった工夫を行っています。
情報発信の際にも、孤立している方に届けることを重視し、検索への広告で最適な接点を作る、共感的で安心感が持てるコンテンツを設ける、ウェブ上で完結させるといった工夫をしています。

その後の展開

このような環境的な背景がありつつ、届けたい相手の想定や届けるための工夫を考えることによって、5年間で750人以上の方からご相談を頂き、政府や自治体も導入するまで至りました。
今後もこの活動を広げることで、より多くの人に支援が届く社会づくりを進めて行きます。

また、「困っているけど支援が届かない問題」は社会福祉全般に共通する課題だと考えています。
OVAは社会福祉×マーケティング的思考を用いて、多分野にノウハウを発信し、情報発信のお手伝いをすることで、この課題を解決したいと考えています。

これから本格的に、他団体連携の取り組みを進めてまいります。

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執筆者 事務局ファンドレイザー 土田毅 プロフィール


 2019年2月20日

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